□ 爆発 □
リボーンが言っていた筒子時限超爆……そんな技あったかなって真剣に考えてみたけどわからなかった。というか、それの元になってるっぽい餃子拳っていう技もほとんど聞いたことがない拳法だから、わからなくて当たり前かもって一人で納得した。
「イーピンは極度の恥ずかしがりやでな。恥ずかしさが頂点に達すると、九筒が現れるんだ」
「ええ?!こいつが極度の恥ずかしがりや?!あの変な反応は恥ずかしがってたの~~~っ?」
「額の筒子は時とともに減っていき、一筒になったとき全身の汗腺からギョウザガスを一気に紛失し、爆発するんだ。この破壊力は小さいクレーターができるほどなんだ」
「それで人間爆弾なんだー!!」
「それって、恥ずかしがりすぎて大爆発するってこと?めちゃくちゃ迷惑なんじゃあ……」
「そーだな」
なんかもう、ここまでくると乾いた笑いしか出なかった……。本気でイーピンちゃんどうしようと思ってると、屋上のドアが開いた振り返ってみると京子ちゃんが立っていた。
「あれ、京子ちゃん。どうしたの?」
「あ、ちゃん!あのね、さっきの子の忘れ物を届けに来たの」
「さっきのって……イーピンちゃん?ならそこに居るけど……今は近づかない方がいいと思うよ」
「え、なんで?」
京子ちゃんに説明しようとした時に、足元に何か来たらしくて、ふと下を見てみるとイーピンちゃんが擦り寄ってきて足元にしがみついてた。
「え?!なに?なんで私にへばり付いてるのー?!」
「イーピンはカウントダウン中、恥ずかしさのあまり人に擦り寄ってくるんだ」
「うそっ!?さん!!早くはがさないと爆発するよ!!」
慌ててイーピンちゃんを下から持ち上げると、あさっての方向に放り投げた。投げたのはいいけど、方向も考えずに投げたせいで屋上のドアに向かって飛んでいった。そこにタイミングよく獄寺くんが入ってきてたらしくて見事にイーピンちゃんを受け止めた。
「なんで受け止めるの?!」
「はあ?」
「獄寺くん危ない!早くその子を投げて!!」
沢田くんが叫ぶと、なぜか凄くいい笑顔と返事で獄寺くんが沢田くんに投げ返した。慌てて沢田くんがフェンスの向こう側に投げると、今度はリボーンが見事にバレーのパスで投げ返してくる。しかも、投げられたイーピンがこっちに向かって飛んできた。思わず受け取ったときには、残りが三筒しかなくて焦った。
「な、なんで私なのー?!ご、ごめん沢田くん!パス!!」
「うそー!?また俺なのー!?」
「よーツナ。また俺とお前、補習だってよ」
「や、山本くん!?あ、沢田くん!山本くんにパスよ!」
「え、あ!山本ー!」
もしかしたら山本くんなら、野球部だから誰の手にも届かない距離に投げてくれるかもと思って沢田くんにパスするように言うと、沢田くんもすぐに気づいたのか山本くんに向かってイーピンちゃんを投げた。
「ん、なんだこりゃ?」
「いいから思いっきり投げて!」
「ん、っしょっと!」
思ってたとおりに遠くの方へ飛んでいくと、爆発した。その爆発の仕方がかなり派手でびっくりしたけど、間違っても学校で爆発しなくてよかったと安心した。だって、学校が破損でもしたら学校大好き人間の恭弥さんがどれだけ怒るか……それで、その先何をやらかすか考えただけでも怖い。
「おい、下のほうに小さいの転がってるぜ?」
「あ、そうだった!大丈夫かな、あの子」
「様子を見に行かないと!」
すぐに屋上から校庭へ行ってみると人だかりができていて、その中を掻き分けて入ってみるとイーピンちゃんが気絶していた。すぐに抱きかかえて、どこかに怪我でもしてないかなって見てみると、別に外傷はないみたいだから安心した。
「大丈夫みたい。それより、この子どうするの?早くどこかに連れて行かないと風紀の人たちが来ちゃうよ?」
「うん。それなんだけど……俺のうちに運ぼうって思うんだ」
「お優しい~っ!さすが十代目っスね!」
「だったら、はい!この子よろしくね!恭弥さんの方には私から適当に言っておくから」
すぐにイーピンちゃんは手渡すと、沢田くんを校門の方に向かって押した。軽く走る感じで沢田くんが行くとその後ろを獄寺くんが付いていった。さっそく報告に行かないと……でもなんて言ったらいいのかなって思って後ろを振り向いたら京子ちゃんと山本くんがまだ居た。そういえば、この二人って事情がよくわからないんだっけ。
「え、えっと……あれは、ね。……マジックの練習だったの!」
「マジック……?そっか、マジックの練習だったんだね!もう、びっくりしちゃったよ!」
「そっか、そうだよな!」
あれで納得したらしく、二人とも笑ってくれた。思わず、一緒になって笑って誤魔化したけど……いったいどんなマジックしたらあんな風に空中で爆発なんて惨事になるのか聞いてみたかった。
「それ、イーピンちゃんの忘れものでしょ?後で渡しとくよ?」
「ありがとーちゃん!」
「じゃ、俺そろそろ部活に行くな」
「あ、あたしも花を待たせてるから教室に戻るね!じゃあね、ちゃん!」
「うん、二人ともバイバイ!」
二人が立ち去るまで手を振って見送っていると、校舎の方から恭弥さんが歩いてくるのが見えた。どうやって誤魔化そうかなぁって焦って考えて、さっきみたいにマジックで誤魔化しちゃえって結論になった。
「それで、さっきのは何?」
「あれは……一種のマジックらしいです。花火を使用したかなり大型のマジックで、練習する場所がないからここでしようとしてたみたいです」
「草食動物も、一緒に居たみたいだけど?」
「草食動物……?あ、沢田くんたちですか?それなら、知り合いらしくて一緒に連れて帰ってもらいました」
「そう。それなら別にいいけど……」
「あ、早く応接室に帰って書類整理しないと……帰るのが遅くなりますよ!」
これ以上突っ込まれると、ぼろが出そうな気がしたから恭弥さんの手を引くように応接室まで急いだ。応接室までの間、珍しく恭弥さんが一言も話さなかった。チラッと横目で見てみたら……心なしか恭弥さんの顔が赤い気がした。もしかして照れてる?!でも、恭弥さんの事だから、この事を突っ込むと後で恐ろしいことになるかも……と、なんとなく感じて黙って応接室まで歩いた。その後はもう元の恭弥さんに戻ってて、普通通り仕事を進めていった。
後日、教室でイーピンちゃんの忘れ物を届けるために沢田くんに居場所を聞いたら、沢田くんの家で居候しているってことが判明。しかも、実はド近眼でターゲットをうっかり沢田くんと間違えたとか……ちょっとだけ、イーピンちゃんの将来に不安を覚えた。