□ 問題 □
ベランダから外を覗いていたら、下の通り道に見覚えのある人物が二人通りかかった。あの二人が一緒に行動してるなんて珍しいなって思ったから声をかけてみた。
「おーい、獄寺くーん!山本くーん!」
大きな声で呼ぶと二人とも気がついたらしくてこっちの方をじーっと見ると、山本君だけがこっちの方に手を振り替えしてきた。二人とも何か話し合ってるみたいだけど私の居る場所がマンションの屋上のせいかほとんど聞こえない。何はなしてるのか不思議に思ってると、二人して手招きしてきたから下に下りていくことにした。
「どうしたの二人とも?」
「よぉ、来たな」
「それにしても凄いなって…あそこ自宅か?」
「うん、そうだけど…あ、寄っていく?お茶くらい出すよ?」
「え、マジで?!…でもよ、これからツナの家に行くからまた今度な。それよりも一緒に行くか?って頭よさそうだし…居てくれたら絶対に役に立つって!な、極寺」
獄寺くんは私と目が会うとすぐに顔を逸らした。もしかしてかなりの照れやさんなのかなって思って少しだけ笑ってしまったけど、隣に居た山本くんも笑っていたから凄く和やかな雰囲気になった。
「ケッ、好きにしたらいいだろ」
「うん、じゃあ着いていくけど…役に立つって何かするの?」
「あ、ああ。今からツナの家で勉強会すんだけどよ…つっても、俺とツナの追試の宿題を教えてもらうだけなんだけどな」
「ああ、そっか。そういえば二人とも追試してたっけ…うん、いいよ。手伝ってあげるね」
「よっしゃっ!じゃあすぐに行こうぜ!」
「あ、ちょっと待って。家に帰って荷物とって来るから!」
急いでマンションの自宅へと帰ると勉強するのに必要そうなノートと教科書をカバンに詰めてから、満(みちる)に「ツナくんの家に行ってくるね」って伝えて急いで山本くんたちの所に向かった。
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他愛も無い話をしながら歩いていると15分くらいで一軒の家に着いた。表札に沢田って書いてあったからたぶんここが沢田くんの家かなって思ってたら山本くんがインターホンを押した。少しして扉が開くと中から沢田くんが出てきた。
「「おじゃましまーす」」
「なっ…獄寺くんとさん?!」
こっちの方をみたとたんに凄く驚いたらしくて顔が崩れてたけど、どうも私の隣に居た獄寺くんを見て驚いてたみたいで私が挨拶すると普通に挨拶を返してくれた。
「考えて見たらわかるやついねーと終わんねーだろ?この二人が居たら百人力だぜ」
「あはは、大げさだって。山本くんは」
「そんなことねぇって」
「そうだよ、二人とも着てくれて凄く嬉しいし。あ、あがってよ」
入りやすいように沢田くんが玄関のドアを全開に開けてくれたからみんなでおじゃましまーすって言って中に入っていった。沢田くんの部屋までくるとそれぞれテーブルを囲むように座り込んだらカバンの中から筆記用具と教科書を取り出した。
「えっと…どうしよう、四人居るからペアでも組んで教える?」
「じゃあ、俺はとだな」
「なっ…ダメだ!それはだけぜってぇにダメだからな!」
「いいじゃねえか。な、?」
いきなり話しを振ってきたからちょっと驚いたけど、なんだかこの二人喧嘩でも始めそうだからあんまり中に入らない方がいいかなって思ってこっそりとカバンからノートを取り出した。
「え…私は別に誰でもいいけど…どうせノート貸すだけのつもりだし。ほら、こまめに取ってるからとても役に立つと思うよ?」
「へぇ…うわ、凄いよ、さん!このノート綺麗にまとめてるよ!」
「うん、あんまり勉強する時間がないからせめてノートだけでもこまめにとってテスト対策をしてるの」
「そういえばさんっていつもテストの結果はいいよね。風紀委員の仕事もあるのになんであんなにテストがいいのか不思議に思ってたけど…そっか、地道にがんばってるんだ」
まるで食い入るようにノートを見ながら感心している沢田くんを見てると、嬉しいんだけどちょっとだけ恥ずかしくなる。
「そのノート、参考書代わりに使って良いから…そろそろ始めない?時間がもったいないし」
「あ、うん。そうだよね」
山本くんと獄寺くんを見ると二人ともなんかいがみ合ってた。これはあんまり刺激しない方がいいなって思ったからとりあえずノートと参考書を渡すとジュースでも飲んで気長に待つことにした。たまに沢田くんにアドバイスをしてはちょっとだけ山本くんの方に目を向ける感じで進めていく。獄寺くんは沢田くんの横で教科書の説明をしてた。
「なぁ、。ここの問7って教えてほしーんだけどよ」
「え、これを…ちょっとまってね」
プリントを借りて問題を見て見ると全然見たいことも無い問題が出ている。というか、習った記憶が無い問題でどう考えても答えがわからない。
「ごめん、ちょっと私にもわからないの」
「そっか、なら仕方ないよな」
「獄寺くんはわかる?この問題」
教科書を握ってる極寺くんにプリントを渡すと「チッ、しかたねぇな」って悪態をつきながらプリントを受け取って目を通した。受け取ったプリントとにらめっこしてた獄寺くんの顔が微妙に青くなってきた。
「わかんねぇ…」
「やっぱり獄寺くんもわからないよね…だってそれ習ってないもん」
「マジかよ!なんでそんな問題が入ってんだよ!」
「うわーどうしよう!そんなの解けるわけ無いよ!!」
「まじーな…全部とけなきゃ落第だったっけ?」
問題が解けなきゃ落第?それは初耳でちょっとだけびっくりした。え、それってなんか苛めみたいとか思ってら獄寺くんが勢いよく机を叩いて立ち上がった。
「なんでそれを早く言わねぇんだよ!!」
「まーまー。まだ時間はあんだしよ。力をあわせて考えようや」
「ったりめーだ!十代目を落第させるわけにはいかねーっ!!」
ふと沢田くんを見ると乾いた笑いをこぼしてた。それをみるとだんだんと可哀相に見えてきて思わず肩に手を置いて、せめて最後までは手伝ってあげようと思った。