□はじまり□



「ここが学校かぁ~…」

並盛中の正門の前に立って感慨深く校舎を見つめた。
イタリアから逃げるように日本に旅立って早一ヶ月…一緒に住んでいる保護者もどきに言われて学校に行くことにしたのはいいけど、学校に来たのは初めてで何をどうすればいいか正直迷ってしまう。

とりあえず、友達でも作って勉強をして普通の学生生活っていうのは楽しめばいいのよね?
うんうんと一人でうなづく。

「っとと、早く職員室ってところに行かないと…」

真新しい制服をなびかせながらスキップでもするような感じで少し早足に歩いて校舎の中に入っていく。
少ししたところでふと視線を感じて振り向くと、校舎の二階の窓に寄りかっかるようにして少年がじっとこっちを見ている。
ふと何かが違うってことに気が付いた。

「学ラン…?」

あれは学ランっていうやつじゃないかなとか、ここって確かブレザーだったよねとか、思ってたらふいに窓際にいた少年が笑った。
何が面白いのか全然わからないし、なんか嫌な感じがしたから無視して行こうとしたら、二階の窓に居た少年はいきなり飛び降りた。
あっけに取られていると少年がどんどん近づいてきてのすぐ目の前まで来ていた。

「ねえ…君、ここで何してるの?今は授業中のはずだよね」

なんだか偉そうに腕を組んでに話しかけてくる。思わずむっとしてしまった。

「明日から転校してくることになったから、下見と挨拶をしに着たの。あなたこそ授業中なのに何してたの?」

からの質問に少し驚いたように目を見開かせたと思ったら笑い始めた。

「へぇ、君って面白いね…」
「何が面白いのか全然わからないんだけど…それはどうも。じゃ、わたし職員室探さないといけないから。バイバイ」

片手を振ってさっさっとその場を跡にしようとした時に後ろから「待ちなよ」って声が聞こえてくるけど無視。
その時、風を切るような音となんともいえない気配で体が条件反射のようにしゃがみこんだ。
目の端でさっきまで頭のあった位置を何か銀色の物を持った人の手がすり抜けていったのを捉えた。

「ワオ…君って素晴らしいね」

振り返るとさっきまで話していた少年がいた。一瞬、何を言ってるのかわからなかったけど、攻撃されたことだけは認識できた。
しかも素晴らしいって…何が素晴らしいのかまったくわからない。というか、危ないじゃない。

「な、何馬鹿なこと言ってるの!!危ないでしょ!!普通知らない人間を攻撃するの?!ありえないわそんなこと!」
「そんなことどうでもいいよ。ねえ、君強いんでしょ?だったら僕と戦ってよ」
「い・や。それに私、戦うためにここに学校に着たんじゃないんだもの。私は学校に青春というものをしに来たのよ」

思いっきり胸を張って答えると目の前の少年は一瞬目を見開いて2,3回瞬きをしたと思ったら今度は笑い始めた。
どうもつぼに入ったらしくずっと笑っている。

「な、何がそんなにおかしいのよ!これでもまじめに言ってるのよ!」
「君ってよく変わってるとか変とか言われない?」
「…………あまり言われない。たまにしか」
「それって、結局言われてるってことじゃないか。まぁ、いいよ。気が変わった、ついておいで」

言われてることは確かだったから何も返事をできずに、むすっとしていると急に少年が歩き出した。
付いて来いと言われて躊躇ったけど、このままここに居てもしかたないから仕方なし付いていく。

「ねえ、どこに行ってるの?」
「職員室」

そういえば、職員室に行かないとっていった気がする…もしかして案外優しかったりするのかなとか思っていたらふいに声がかかってきた。

「そういえば名前、聞いてなかったよね」
 。あなたは?」
「雲雀 恭弥。恭弥でいいよ。それとここが職員室、それじゃあね」

去っていく恭弥に向かってお礼を言ったら、彼は振り向かずに片手を振りながら「今度、戦ってね」という返事を返した。
それにはさすがに苦笑いしか出なかった。