□ 互いの確信 □
巫女のもとへと行くために12宮を上り教皇の間へと向かっている最中に、ちょうど教皇の間から帰ってきたシャカと遭遇した。
シャカの方もムウだと気付いたらしく、近くまで来ると歩みを止めた。
「こんばんは、シャカ。たしか任務に就いていたはずですよね。報告の帰りですか?」
「ムウか……ああ、今回も無事に終わったのでな。報告しに教皇のもとへと出向いたのだ」
シャカにしては珍しく、周りが気付くほど機嫌がよかった。
かすかに微笑さえ浮かべている様子をみると、よっぽどのことがあったに違いない。
「任務完了の報告だけにしては、ずいぶんと機嫌がいいですね」
「ああ、そのことか……ふむ。さきほど教皇の間に出向いたのだが、アテナもお戻りになられたところだったのでな、そのまま同席した。話は、巫女の護衛についての話だった」
「巫女の護衛?たしかに何があるかわからない以上、護衛は必要ですね」
シャカは同意するように頷くと、口を開いた。
「教皇も、そう言っておられた。私も巫女には、もっと警戒心を持たせた方が良いとは思っていはいるが……なにぶん巫女は、そういうことに関しては無頓着なところがある。」
たしかに巫女は、女聖闘士だった影響かあまりにも隙が多すぎる。
一介の聖闘士までならば問題はないが、もしそれ以上の相手だったらと考えると不安はぬぐえない。
「巫女の護衛は、誰がすることになったのですか?」
「我ら黄金聖闘士の中から定期的に選ばれることになるらしい。その最初の護衛には、私がつくことになった」
どうしてシャカがここまで機嫌が良いのか理由がわかった。
護衛というからには、おそらく行動を共にするはず……もし、シャカに巫女への好意の自覚があるのならば、きっとシャカは行動に出るだろう。
「それは……シャカ、もしかして、あなたが志願したのですか?」
「もちろん、私から志願したが……?」
やはりシャカには、巫女に対する想いの自覚がある。
いつかは自覚するだろうとは気づいていたが、思っていたよりも早かったことに驚いた。
少しの沈黙にシャカは不思議そうに首を傾けると、すぐに何かに気づいたように口元に笑みを浮かべた。
「巫女が誰を選ぶとしても、それは巫女自身が決めたことだ……それは君も重々承知しているのだろう?」
まるで問いかけるような言い方に、やはりシャカは気づいていると確信した。
私の巫女に対する想いも、巫女に胸の内を告げたことも。
「……そうですね、全ては巫女が決めること……。では、私は急いでいますので、先を失礼します」
「ああ、わかった。私も荷物をまとめて早く教皇宮に行かねば……」
軽く会釈をしてシャカの横を通りぎると、苛立ちにも似た焦りを抑えながら教皇宮にある巫女の部屋へと急いだ。
fin.