□ 勧誘 □
昼休み、みんなで軽く雑談しながらお弁当を食べていたけど途中で会話が途切れた。丁度今だと思っておもいきって聞いてみることにした。
「ねぇ、なんで沢田くんの家庭教師がリボーンなの?」
「え…あ、それは…」
「それはこいつが十代目だからだぞ」
いつのまに着てたのかリボーンが屋上のタンクから飛び降りて沢田の前に着地するとの方を向いた。十代目と聞いて一瞬だけ頭が止まったけどすぐにボンゴレのことだと気がついた。
「十代目ってボンゴレの?!うそっ、なんで沢田くんが十代目なの!?」
「それはこいつにボンゴレの血が流れてるからだぞ」
「そうなんだ…人って見かけによらないんだね」
「おめぇなぁ…十代目はすごい方なんだぞ!どこがすごいかって言うとな…」
「あ、だから極寺くんはいつも沢田くんを十代目って呼んでたんだね。」
獄寺くんが何か言ってるけど気にせずにうんうんと納得してると、少し落ち込み気味の沢田くんが「さんってどこまでもマイペースだね…」とか呟いていた。それもあまり気にせずにお弁当をつついていると、リボーンがじーっとこっちを見ていることに気がついた。
「どうかしたのリボーン?」
「おめぇ、ツナのファミリーにならねぇか?」
「ファミリー?…マフィアになれってこと?それはぜーったいにイ・ヤ。」
「なんでそこまで嫌がるんだ?」
何か、人の心の奥底まで読み取ろうとする感じの視線に耐え切れずに思わず視線を逸らした。別にやましいことがあるわけじゃないけども、嫌いなものは嫌いだから仕方がない。
「それは……リボーンには関係のないことだから。別にリボーン達が嫌いってわけじゃないのよ、ただ…マフィアが嫌いだから入らないだけなの」
「あはは、そんな深刻な顔すんなって。マフィアごっこだろ?つきやってやろうぜ?な?」
「ごっこって…」
笑いながら、まるで子供の遊びだからって感じで言われるとなんだか頭の中を疑ってしまうけど、よく考えたら山本君は一般人なんだからそれは当たり前の考えなような気がした。特にリボーンの外見をみればますますそう思うかもしれないし。
「まぁ…ほんとうの子供の遊びなら付き合ってあげてもいいけど…でも実際は違うし」
「リボーンの言ってることは気にしなくていいよ、さん」
沢田くんに向かってリボーンが「ツナは黙っとけ」と言いながら見事な蹴りを決めた。リボーンにしては珍しく少し困った顔でこっちを向くと話しかけてきた。
「どっちにしろどこのマフィアも欲しがる逸材だからな、もし存在が見つかればおめぇは狙われるぞ?月姫の」
「え…月姫ってこいつがですか?!リボーンさん」
「ああ、正真正銘の月姫だ」
通り名が出された瞬間に獄寺くんが反応した時、そういえば当事は相当有名になったって満が言ってたことを思い出した。
「おい、リボーン。なんのことだよ、月姫って」
「月姫って言えば…異常なほど強くて、そのくせ人は絶対に殺めなかったって…外見の美しさと常に満月の日にだけ姿を現すことから月姫って呼ばれてるんです。十代目」
「さんって…マフィアだったんだ…」
沢田くんの目がすごく以外って語ってる…ああ、きっとどこかのヒットマンかマフィアだって思われてるんだ。そりゃあ周りがこんな人たちばっかりだったらそう思っても仕方ないのかもしれないけど、すごく嫌。
「ち、違うわよ。ただ、生活のためにお金が必要だったから…少しの間だけ仕事をしたら変な通り名がついたの」
「でも月姫って言えば瞳が黄金っていう特徴がありますよね?こいつはどう見ても黄金色には見えませんが…」
「ああ、普段はそうだが…特殊能力を使うときだけ色が変わるんだ。そうだろう?」
「そっか…リボーンはボンゴレだから知ってたんだね…でもボンゴレの中でも一部の人たちしか知らなかったのになぁ…まぁ、リボーンだしね」
「で、どうするんだ?このままどこのファミリーにも属さないってのは無理な話だと思うぞ?」
「う~ん…力さえ隠して目立たないように普通に生活してたら大丈夫じゃない?ようは一般人に見えるように生活してたらいいってことじゃないの?」
沢田君たちに相槌を打つように見ると、なぜか無理に笑ってる感じの笑顔で笑い始めた。極寺くんはなんか激しく首を振ってるし山本くんはなぜか笑ってる。そんなにおかしな発言をしたのかなってちょっと思った。
「さんは絶対に目立つと思うよ」
「もっと周りを見てみろよ」
「あはは、面白いこというな」
「おめぇ…もしかして気づいてねぇのか?まぁ、気づいてたらとめるな」
なんだかすごく意味ありげなことをリボーンに言われて「なんのこと?」って訪ねてみたらリボーン独特のニヒルな笑いでこっちを見てきた。なんとなく嫌な予感がしてきたけどこれはますます聞かないといけないってことに気がついた。
「たぶん、制御ができてないと思うんだが…」
「だから何が?」
「いや、溢れてるとでも言ってた方がいいか…おめぇの瞳から微弱なチャーム(魅了)が出てるぞ」
「チャーム(魅了)……うそっ!?なんでそんなことになってるの?!というかチャーム(魅了)なんて私もってなかったはずなのに!?」
「潜在的に持ってたんだろ。ただ気がついてなかっただけだ…特におめぇの相当強いはずだぞ。それくらいのチャームでも一般の免疫のないやつなんてコロリといっちまうぞ」
なんだか転校してからの告白の嵐に理由がいった気がした。つまり魅了しまくってたってことで。それでよく生活してたなぁ~って少しだけ自分で感心した。
「そっかぁ…でも、とめかたわからないし…どうしよう」
「ツナのファミリーに入らねぇか?そうすれば力を制御する特訓もできるぞ」
「何、それ?交換条件っていうやつ?」
「おめぇがそう思うならそうだ」
「でも、マフィアは嫌いだから…」
「でもツナは嫌いじゃないんだろ?」
確かに、嫌いじゃない。きっといい友達になれる予感がするし、なんだか懐かしい感じも凄くする。でもマフィアという存在自体が私にとっては嫌なものとして決定してる以上は無理なことに思えた。
「さっきも言ったけど別に嫌いじゃないし…それよりもいいお友達になれそうな感じがするの」
「なら、おめぇはいつかでいいからツナのファミリーに入れ」
いつか…かなり曖昧な言葉だけどそれでもまだずっとましな感じに思えた。別に今すぐにってわけじゃなくて気が向いたらってことでいいってことだからそれはそれでよしとしよう。
「うん、それならいいよ」
「よし、まぁ予約ってとこだな。特訓の方は…今のところそこまで酷くなさそうだから気になるようなら言ってくれれば良いぞ。その時に特訓すればいいだろ」
「うん、その時はよろしくね。リボーン」
「ああ、まかしとけ」
丁度、お弁当も綺麗になくなったところで立ち上がり背伸びをしていると放送の呼び出し音が聞こえた。
" 今すぐ応接室に来て"
「え、わたし…何かしたっけ?というかこの声って恭弥さん…?ごめん、みんな私ちょっと行ってくるね」
心なしかいつもよりも怖い感じがする声だった。これは結構怒ってるんだってことに気がついてあまり行きたくなかったけど、さすがに無視はもっとやばい。重い足を無理に動かすように応接室へと向かっていった。