□ 子守 □
リボーンに呼び出されて校舎裏に行ってみると、先に獄寺くんと山本くんと沢田くんが居た。あと、その下の方になんぜかうずくまってるランボくん。
「来たか、。んじゃ、ランボの保育係の適正テストをはじめるぞ」
「なっ!」
「テスト?」
「何言ってんだよっ」
ランボくんの保育係の適正テスト??来たとたんにいきなり言われると、話に着いていけない。そのままそこで固まってても仕方ないから、リボーンとヒソヒソと獄寺くんの適正がって話してる沢田くんに話かけた。
「え…あの、これっていったいどういう状況なの?」
「あ、ごめん。急に言われてもわからないよね。リボーンがさ、ランボの保育係紹介してくれるって言うから来たんだけど…どうも、みんなの仲から選ぶつもりらしいんだ」
「あはは、なんかリボーンらしいよね」
ずっと俯いたままのランボくんが、急に火を付けたように泣き始めた。駆け寄ってそっと抱き上げると、ランボくんがしがみついてきた。あやすように背中を軽くなでると落ち着いたらしく、だんだんとおとなしくなっていった。
「大丈夫?落ち着いた?」
「うっく…ひっく…う、うん」
ランボくんは随分と落ち着いたらしく、こっちの方をじーっと見てくる。その目がくりくりしてて可愛いなって思ってたら、急に片手を上げて飛び跳ねた。
「おれっち決めた!とケッコンするもんね!」
「あはは。何言ってるのランボくんは」
小さい子によくある無邪気さに思わず笑みが零れる。頭を軽く撫でようとした瞬間に、リボーンの蹴りがランボくんに見事に命中していた。あっと思った瞬間には綺麗に弧を描いてランボくんは飛んでいった。駆け寄ろうとした時に、なぜかリボーンに静止をかけられた。不思議に思って周りをふと見たら、片足を上げた体制で後ろから沢田くんに抑えられてる獄寺くんと、意味もなく笑っている山本くんが見えた。
「リボーン!急になんなの?ランボくんまた泣いちゃったじゃない!」
「気にするな。それよりもテストを始めっぞ。ルールは簡単だぞ。あいつを笑わせた方が価値だ。あと、は手を出すなよ」
「まあ、ランボくんが泣き止むなら別にいいけど……」
笑わせるって言ってるし、大丈夫かなって思って少し後ろに居る沢田くんのところまで移動した。片方だけ応援ってことはできないから、とりあえず二人に向かって「二人ともがんばってね!」と応援すると、獄寺くんはこっちの方を少しだけ見てるだけだったけど、山本くんはいつもの二倍増しの爽やかな笑顔で振り返ってくれた。
「山本、てめーにだけは負けねーぞ。今日こそ白黒つけてやる」
「よっしゃ、やるからには勝たねーとな」
「オレ、先攻でいくぜ」
獄寺くんが先攻になったらしく、ランボくんに近づいていく。泣き叫んでるランボくんに右手を差し出して、仲直りしようとしてるみたいだった。これはいけるかなって見ていたら、ランボくんが何か差し出したみたい。それを受け取ると同時に獄寺くんが驚いて投げた。飛んでいったモノは爆弾らしくて、すぐに爆発した。
「やっぱてめー死んでこい!!!」
「くぴゃっあ」
「落ち着け獄寺!!」
凄く怒ってる獄寺くんを止めに行こうとしたらリボーンに止められた。文句を言おうとしたら「大丈夫だ、ツナがなんとくしてくれるぞ」と言われて振り返ってみると本当に沢田くんがランボくんを慰めてた。
「次、山本だぞ」
「オッケー。んじゃ、ちょっくら行ってくるわな」
山本くんは、どこかからかグローブと野球玉を取り出すと、ランボくんのそばまで来てしゃがみこんだ。これはなかなかいけるんじゃないかな?って思って少し期待した。
「おまえ、キャッチボールやったことあっか?グローブでこのボールをとるんだぜ」
ランボくんは興味があるらしく、じーっとグローブとボールを見てる。山本くんはそのグローブとボールをランボくんに渡すと、距離を取るように離れていった。光景だけなら、仲のいい兄弟がキャッチボールをしている光景っぽくみえる。でも次の瞬間、山本くんが尋常じゃない速さの玉を投げた。それが見事にランボくんの顔に直撃してランボくん自体が吹っ飛んでいったから慌てて駆け寄った。
「ちょっと!いくらなんでもやりすぎなんじゃない?大丈夫?ランボくん」
「そうです!みんなそろって何してるんですか!」
抱き上げようとした時、後ろからハルちゃんみたいな声が聞こえてきて、まさかって思って振り向くとほんとうにハルちゃんが後ろにいた。
「え……なんでハルちゃんが?」
「なんでお前がうちの学校にいるんだよ!?」
「転入か?」
「ちがいます!新体操部の交流試合に来たんです。やっとツナさんたちを見つけたらランボちゃんを泣かしてるなんて……たとえツナさんでも、ランボちゃんをいじめたらハルが許しません!」
ハルちゃんはランボくんを持ち上げると、沢田くん達から隠すように抱き上げた。それでも、ランボくんは一向に泣き止まない。
「ランボくん、大丈夫だよ?ほら、泣かないの。男の子でしょ?」
弾けたように泣いているランボくんをあやそうと思って、ハルちゃんに貸してって言って両手を差し出した。ハルちゃんがランボくんを渡そうとしたとき、ランボくんが頭からバズーカらしきものを取り出した。
「ちょ…ランボくん何出してるの?!」
「はひ?」
「げっ、十年バズーカ!!」
あっという間にバズーカらしきものが爆発したと思ったら、辺り一面が白い煙に覆われた。前の方から誰かが倒れ込むように乗っかってきたからハルちゃん?って思ったけど、煙が引いたらハルちゃんじゃなくて知らない男の人で、全く置かれている状況がわからなくて頭が止まった。
「え~っと……あの、誰ですか?」
「おや…さんじゃありませんか。それにしても随分と幼くなりましたね……もしかして十年前のさんですか?」
十年前?何言ってるのかよくわからなかったけど…そういえばさっき沢田くんが十年バズーカって言ってたっけ。前に満から、十年バズーカってバズーカがとある田舎のファミリーに伝わってるらしいて聞いたことがあるのを思い出した。なんでも、十年後の自分と今の自分を五分だけ入れ替えることができるって凄く楽しそうに話してたのが印象的で覚えてる。
「……もうどうでもいいけど…とりあえず、どいてくれるかな?」
「!?これは失礼を…っ」
やっと自分の体制を理解したらしく慌ててどこうとしたけど、その前にハルちゃんの叫び声と共に横に吹っ飛んだ。どうも、ハルちゃんが蹴飛ばしたらしい。一瞬、助け起こそうかなって思ったけど、横で息を切らしながら近づいてくるハルちゃんがなんとなく怖くて止まった。
「ちゃんに何するんですか!ヘンタイ!」
「いや、これはたまたまで…っ」
「うっせぇ!アホ牛が!」
「それに胸のボタンも開いててなんか全体的にエロイ!いいかげんにしないとわいせつ罪でつーほーしますよ!?」
「ハル、わかるぞ!お前の言うのことはもっともだ。それになんだこのへんてこな首輪は」
ランボくんにかなりの距離に近づくと、そのままペンダントと掴んで怒鳴った。もしかして、あのペンダントみたいなのを首輪って言ってるのかな。
「おめーは、鼻輪が似合ってるんだよ!アホ牛!!」
「ええ!?」
言いたいことを言ってすっきりしたのか、獄寺くんは豪快に笑った。その笑い方がテレビに出てる悪代官みたい、ってちょっと心の中で思ったけど、口に出さずにしまった。
「オ・オレ…失礼します……」
「おー、けーれけーれ!」
獄寺くんに結構、言われまくったせいでフラフラになりながら立ち去ろうとしたとき、私と目線があった。そのまま目線を逸らさずにじっとこっちを見ると、フラフラとこっちの方に来た。
「先ほどは、すみませんでした…」
「ううん、気にしなくていいから……それより大丈夫?」
「ぐずっ…やはり、さんはいつの時代でも優しいですね。じゃ、オレはこれで…」
獄寺くんのが聞いたのかわからないけど、ものすごく目を潤ませながら十年後のランボくんはよろよろと立ち去っていった。その後ろ姿を見ながらちょっと可哀想かもって思った。ふと視界に入った山本くんが何かを見つけたらしく、しゃがみこんで拾ってる。
「おい、おまえ。角落としてるぞ」
「あ、投げてください」
「え、ランボくん!投げるのは止めた方がっ」
さっきの山本くんの投げっぷりを思い出して、慌てて止めようとしたけど間に合わずに角が飛ばされた。勢いが凄いせいか、音も普通の音じゃなく、轟音と共に角が飛んでいき、見事にランボくんのおでこに刺さった。
「ランボくん!?」
「わ!わりぃ!!」
「が、ま……う、うわああああ!」
とうとう座り込んで泣いたランボくんに駆け寄って頭を撫でてあげると、がっしりとしがみ付いてきた。小さい頃とたいして変わらないなぁって思って微笑ましく見てると、ランボくんも少しだけ落ち着いたのか声が小さくなった。
「結局、こうなるのか……」
「やっぱりツナが面倒みるしかねーな」
「うん、そうした方がいいと思うよ?さすがにね…」
「リボーン、最初からそのつもりだっただろー!!?」
沢田くんの最初からリボーンはそのつもり発言を聞いたら、リボーンが暇だから暇つぶし程度に楽しんでたんだって思って乾いた笑いしか出なかった。
それから少しして十年バズーカの効果が切れてランボくんは元に戻ったけど…なぜか寝てた。すぐにそのまま保健室に持って行くと、シャマル先生に押し付けるように渡してきて、いつも通り放課後の風紀の仕事に戻った。