□ 難関 □
沢田くんたちと宿題をがんばろうって決めたのはいいけど、いくら考えて見ても全く習ったことのない問題はわかるわけもなく時間だけが過ぎていった。なんだか無駄に時間を使ってる気がしてきて、ため息を吐いたとき、誰かが部屋の扉を開けた。
「この暑苦しい中でよくやるな。いっそうのことがまん大会でもやれ」
「暑っ!なにやってんだよ!悪魔かおまえは!」
なぜか、コタツにお鍋という真冬のスタイルでリボーンくんがそこにいた。沢田くんは突っ込んでたけど、ここまでくると突っ込む気さえなくなるのによく突っ込んでるなって思った。
「おれじゃねーぞ」
「お前以外にだれがこんなことっ…」
沢田くんがいきなり黙ったと思ったら、知らない制服を来た女の子がものすごく暗い雰囲気で扉から出てきた。その子はなんだか凄く暗い感じで「悪魔じゃありませんから」とかいいながらリボーンくんが持ってきたコタツセットを片付け始めた。その近くで何かこそこそと沢田くんが話してるけど途中で「元はといえばお前のこと好きだったんだぞ!」とか叫んだ。え、もしかして結構ゴタゴタとした関係かなって思ってたらその女の子はコタツセットをもって「ただ、ハルは…悪魔じゃありませから…」とだけ言って部屋から出て行った。なんだか空気が凄く重くなった気がした。ここは一つ明るい話をふらないと。
「沢田くんって…もしかしてモテモテ?」
「え?!な、なに言ってるのさん!」
「え、だってほらさっきの子って沢田くんの彼女候補でしょ?」
「はあ!?なんでハルが!?」
「いや、沢田くんのためにコタツセットを用意して元気付けようとしてたから…」
「そんなんじゃないよ…それに俺は」
「すげぇなツナ。どうやって知りあったんだ。あんな名門の子と」
沢田くんが全部言う前に、山本君が感心したように話しかけてきた。そういえばあの制服って確か女子中の服だったっけ。どこのまでは知らないけど極たまに見かける。
「あれ、緑中の制服だろ?この辺じゃ超難関のエリート女子中の」
「へ~あのアホ女がねえ」
「ハルって頭いいんだー」
みんな半信半疑みたいな感じで返事をしてたけど、ふと疑問に思った。超難関のエリート女子中…え、それってもしかしてこの問題を解ける可能性があるってことじゃないのかな。だって習ってる範囲も絶対に広いわけだから。
「それって…そのこならこの問題を解けるかもしれないってことじゃないの?」
私が言ったとたんに沢田くんは立ち上がって「ちょっと俺、ハルに聞いてくるっ」とか言いながら扉を開けた。開けた瞬間、さっきコタツセットを抱えて出て行ったはずの女の子がなぜか耳だけをこっち側に向ける姿勢でいた。そっか、聞き耳立ててたんだ。結局、その女の子と一緒に勉強することになったらしいけど、なぜかその子は私の隣に座り込んで凄く真剣な目でこっちを見ていた。
「えっと…あ、そっか。まだ名乗ってなかったっけ。 よろしくね」
「さんですね。三浦ハルです。よろしくです」
「あ、あの…私に何かついてる?」
「単刀直入に聞きます…ツナさんとは付き合ってるんですか?」
え…もしかして勘違いされてる。しかもそうとうな勘違いかもしれない。ふと周りを見て見るとみんなそろって噴出してたけど気にしないことにした。そっか、そういえばこの子沢田くんが好きなんだっけ、なら誤解だけでもとっておかないと。
「え…付き合ってないよ?というか、別の人と付き合ってるから大丈夫だよ?」
「そ、そうなんですか…ごめんなさい。変な勘違いしちゃって…なんだか凄い美人さんでしたからもしかしてとか思ったんです」
「あはは、気にしないで…よくあることだから」
「えっと、あの…よかったらちゃんって呼んでもいいですか?ハルのことはハルでけっこうですから」
「うん、いいよ。じゃあハルちゃん。あらたまってよろしくね」
ハルちゃんはなんだか凄く嬉しそうに「はい!」って答えてくれた。面白い子かもとかちょっとだけ思ったけど口には出さなかった。それにしても沢田くんの周りって面白い子が多いかも…変って感じが凄く近いけど。
「あ、そうだった…あのね、この問い7の問題ってわかる?」
「はい?問い7ですね…これ、習いました。わかると思います」
ハルちゃんのわかりますの一言で、これでやっと問題が解けるってことで周りから喜びの声が上がった。後は答えを教えてもらうのを待つばかりって時になってから5分立っても10分経ってもなかなか答えが出なかった。結局、1時間が過ぎた頃になってからものすごく暇になって来てうつらうつらと眠りの世界に入りかけていた。それから気がついた頃にはハルちゃんの「ごめんなさい!わかりませんー!!」って声が響いて目が覚めた。外を見て見たらもうほとんど暗くなっていてかなりの時間が経ったことがわかった。
「てめーっわかんねーならハナっから見栄きんじゃねーー!!」
「やばいよ、夜になっちゃったよ!」
「……解ける気がしたんですー」
「落ち着いてって二人とも。解けないのは仕方ないよ…だから、ね」
なんだか食って掛かりそうな勢いの極寺くんを何とか抑えて居ると、今度は窓が開いて牛柄の変な服を着た子供が変な歌を歌いながら入ってきた。この子供…前にスーパーで見たような気がする。確かランボくんだっけ。それにして凄いタイミングの悪いときに入ってきてるなぁ。しかもお茶碗とスプーンを持ってるし。
「お…おれっち。通りかかっただけだよ。……今日は何?げ、キムチか」
「飯食いにくんな!!」
沢田くんが突っ込んでると横からハルちゃんがランボくんの存在に気づいたらしくて「わ、この子微妙にカワイイ~」とか言いながら楽しそうに持ち上げた。沢田くんの気に触ったらしくて「お前達!宿題の邪魔するなら帰ってくれよ!!」って怒鳴った。その時にたまたまランボくんがこっちに気づいたらしくて駆け寄ってくる。
「みーっけ!」
「こんばんは。元気だったランボくん?」
「うん!ランボさんはいつも元気だもんね!」
「そっか。あ、ほら早く食べないとお鍋さめちゃうよ?」
「食べる!も食べる?」
「ううん、私はいいからランボくんだけで食べてね」
ランボくんにお鍋を渡すと食べ始めた。私がランボくんと離している間にどうもビアンキさんを呼んだらしてく部屋にビアンキさんが入ってきてた。なぜかベッドで獄寺くんが呻いているのが凄く気になるけど聞きにくいからそのままにしておいた。そういえば、ランボくんと話してる最中に叫び声を聞いたような…まだかね。
「どう、ビアンキ…わかる?」
「そうね」
じーっと問題を見ていたビアンキが「こんなのものどーでもいいわ」とか言いながらプリントを破り始めた。それにはさすがに驚いたけど一番衝撃を受けたのは沢田くんだった。なんか凄い泣き叫んでる…可哀相に。後ろの方で山本君がなだめてるけど…やっぱり可哀相に見える。沢田くんが一人で騒いでいると後ろの方から知らない声が聞こえたから振り向くと変なおじさんが立っていた。
「どれだね、ハル。わからない問題というのは」
「これよ、父さん」
どうもハルの父親らしい。ハルの話だと大学で数学を教えてるので呼んだらしい。それなら最初に教えてくれたらいいのにって思ってたら沢田くんが同じことを口走ってた。ハルの父親は超大学レベルとかいいながら問題を解いてるけど…え、超大学レベル?!なんでそんなのが追試に出てるの!?絶対におかしいって!これじゃあただの嫌がらせなんじゃあとか思ってたら「答えは3だよ」って声が聞こえた。そっか3なんだって思ってたらその横からリボーンの声で「いいや、4だぞ」って聞こえた。
「おまえネコジャラシの公式をミスってるぞ。答えは4だ」
「な、何言ってんだよリボーン!相手は大学教授だぞ!」
「んん…あのもみ上げ……ああ!あなたは天才数学者ボリーン博士ではありませんか!!」
リボーンがボリーンだと聞いてかなり驚いてる沢田くんを見て、リボーンはなんでもありだからそんなに驚いてもしかたないよと言おうとしたけどやめておいた。きっとそのうち気づくかなって思ったから。それよりも時間が気になって時計を見るとかなり時間が過ぎていた。これはさすがに帰らないと満が心配するかなって思った。丁度問題も解けたしこれで大丈夫よね?そう思ってこっそりと「ごめん、時間が遅いからそろそろ帰るね?」と沢田くんに言うと「ごめん!こんな時間まで付き合ってもらって!ちゃんと送っていくから待ってて!」と言われたけど断ってさっさと家に帰った。家に帰ると満がものすごく心配したんですから連絡くらいくださいって半泣き状態で言われて今度から注意しようって思った。