□応接室□



そうこうしているうちに、あっという間に放課後になってしまった。
帰り支度をして応接室に行かないとって思ってたら、応接室の場所を知らないことに気が付いた。
仕方ないから横で極寺くんと話していた沢田くんに聞こうって思って話しかけた。

「ねえ、沢田くん。応接室ってどこかわかる?」
「え、なんでそんなところに!?行かないほうがいいよ!」

うわ、すごく驚かれてる。もしかしてかなりヤバイところなのかなって思ったけど、どっちにしろ行かないといけないから適当に事情でも話してさっさと場所を教えてもらおうっと。

「う~ん、なんかね。風紀委員になることになっちゃって…」
「はあ!?なんで風紀委員に?!!だめだよ~あそこには雲雀さんっておっかない人が~」
「いや、あの。彼氏なんですけど……あ、まだ言ってなかったっけ。私、恭弥さんと付き合うことになったから」

言ったとたんに、クラス中がざわめいた。目の前の沢田くんもなんかすごい驚いてるけど、一番面白いと思ってしまったのは極寺くんだった。
驚きすぎたのか、口がぽかりと開いてポロリとタバコが落ちた。

「それでね、風紀委員に入ることになったから応接室ってどこ?」
「あ…あ、うん。向こうの校舎の二階あたりだよ」

教室中がざわめいていて、なんとなく居心地がわるかったからお礼だけ言ってさっさと教室から出て行った。
言われたとおりに隣の校舎の二階に行くと応接室って書かれた部屋を発見した。
そっと控えめにノックしてみると、入っていいよって返事が返ってきたから扉を開けてみると恭弥さんが書類を片手にもちながら椅子に座っていた。

「やっと来たね。遅いよ」
「これでも急いできたんですけど…」
「はい、これ。ちゃんと付けてよ」

うわ、人の話聞いてないよこの人。ま、いいわ。それにしてもこれって…
渡されたものはピンバッジっと腕にかける布。布の方はよく見てみると風紀委員って書いてある。
そういえば風紀委員の人ってみんなこんな感じのものを付けてたのをうっすらと思い出した。

「朝は七時半に集合。夕方は4時に集合して、その後は巡回。遅刻は厳禁だからね」
「朝ってずいぶん早いですね。」
「部活とかで早く来る生徒がいるからね」

……なんだろう、間が持たないというか、会話が続かない。これはもう、さっさと帰るしかないわ。
そう思って失礼しますねって言って立ち去ろうとしたとき静止の声がかかった。

「せっかくだから仕事していって」
「仕事って…なんの仕事ですか?」
「君には主に巡回をしてもらう予定だけど…とりあえず今日は書類に目を通してサインでもしておいて。それとお茶汲みね」

そういうと、手元にある書類の半分を渡された。しかたなくお茶を汲んで椅子に座ると言われたとおり書類に目を通してサインをしていった。
それにしても漢字とひらがなばっかりで…

「日本語って読みにくい…」
「君、いきなりなり言い出すの」
「え、あ、すいません…私、ちょっと前までイタリアに住んでたものだから。日本語も最近やっと覚えたばかりで」
「帰国子女?どおりで変な行動ばかりしてるわけだ」
「え、私そんなに行動が変でした?!」
「うん、わりとね」

結構、ショックで頭を思わず抱えてしまった。そういわれれば変な行動というか、かなり色んなことを回りに聞きまくったような…。
うわーとか言いながら一人で軽いショックに浸っていると声がかかってきた。

「ねえ、いつまでそうしてるの。早く仕事してくれない?」
「あ…はい」

言われたとおりにまた書類に目を通してはサインをするといった作業を始めた。
少ししてから雲雀の方からポツリと独り言のような言葉が出てきた。

「でもまあ…面白いから別にいんじゃない?」

言うとまたすぐに書類に目を通し始めた。これってもしかして…さっきのことを励ましてる?
そう思うとなんだか嬉しくて、ありがとうございますっていうと普通に無視された。
でもなんとなく照れてるような気がして思わず笑みが零れてしまう。
見つかって恭弥さんから睨まれたけど、気にせずに書類に取り掛かった。