□ 終着 □





急いで雲雀さんの病室に向かうと、病室の前にイーピンちゃんとランボくんが居た。なんでここに二人が居るのかなって思って近づいてみると、二人とも気がついたらしくこっちの方に走ってきた。

みーっけ!ランボさんと遊ぶもんね!」
「ら、ランボくん!イーピンちゃんも、こんなところでどうしたの?」

飛び込んできたランボくんを慌てて受け取るように抱きしめて、イーピンちゃんの方を見るとにっこりと笑い挨拶代わりにペコリと頭を下げてた。私もつられるように頭を下げる。

「あのね!ランボさんはツナのお見舞いにきたんだ!」
「お見舞いって……ここは恭弥さんの病室じゃなかったっけ……」
「ツナがここに入ってくの、ランボさん見たんだぞ!もツナが居れば信じてくれるんだもんね!!」
「ちょ……待って、ランボくん!」

止める声も聞かずに、ランボくんは勢いよく腕から抜け出して扉を盛大に開けた。扉の向こうには本当に沢田くんが居て、かなり驚いたようすで口をあんぐりと空けてパクパクしてた。沢田くんを見つけたランボくんが興奮気味に指をさして何かを言おうとした瞬間に、沢田くんが驚異的なスピードでランボくんの口を押さえた。落ち着くのを確認してから、そっとランボくんを離した。

「沢田くん、急にどうしたの?」
「どかん?」

ランボくんが何か言ったから見てみると、爆弾を出してて、しかもピンを抜いてた。慌ててランボくんを掴むと廊下の突き当たりにある窓まで走っていってから、爆弾を掴んで思いっきり放り投げた。少し経ってから、爆弾が空中で爆発した。

「ランボくん、きなり爆弾なんて出したら危ないでしょ!もう出さないの!わかった?」
「でもツナが……」

ランボくんが言い終わる前に、松葉杖で必死に追いかけてきてた沢田くんが追いついた。結構疲れたらしくて、深呼吸を数回するとランボくんの方を見た。

「おまえオレを殺す気かー!!今、部屋で騒ぐと恐ろしいことになるんだぞー!!」
「恐ろしいこと……?」
「そーだよ!あそこにはおっかねー人が居て……ってさん!?」

今頃、気がついたらしくこっちを見たとたん、あたふたと驚いていた。その後は、なんだか言い難そうに、えーとかあーとか呟いてたけど……まあ、なんとなく察しがついた……たぶん、機嫌の悪い恭弥さんと同室だったんだろうなぁ。そう思うとちょっと可愛そうに見えた。

「大丈夫、なんとなく想像が着いたから……それよりも怪我の方は大丈夫?部屋でゆっくりとしてないと……それにあんまり動くと治りが遅くなるよ?」
「う、うん。ありがと。オレ、部屋に一回戻るよ」

私も恭弥さんの所に行かないといけないから、今来た道を帰っていく沢田くんの後を追うような形で歩いていく。さっき、開けっ放しで出てきたせいで扉が開いたままだった。丁度、病室の入り口のところにイーピンちゃんが突っ立ってた。

「あれ、イーピンちゃんじゃない?」
「あ、ほんとだ。イーピンのやつ、なに立ちつくしてんだ?」

不思議に思って近づいてみると、イーピンちゃんがこっちに振り向いた。その時、おでこに九筒が浮かんでいて、しかも一筒減っている。

「え、え……なんで筒子時限超爆がカウントダウンが入ってるの??!」
「うそ!なんでー?!イーピンが照れるようなことは何もっ……はっ、まさか……」
「沢田くん!何か思い当たるのでもあった?!」
「ヒ、ヒバリさんに惚れてる-!!」

沢田くんが言った言葉に、なぜかわからないけど冷水を浴びせられるような衝撃を受けた。ヒバリさんに惚れてる……?それはつまり、恭弥さんのことが好きってことで……。
ここで始めて気がついた。私って、ほんとに恭弥さんが好きな女の子にとったら迷惑なんじゃないかってことに。もしかしたらその中に、私なんかよりもずっと恭弥さんにぴったりな女の子がいるかもしれないのに。そんな考えに耽っていると、外の方から爆発音がした。慌て回りを見ると、沢田くんとイーピンちゃんが居ない。よく見ると、部屋の中の窓側に沢田くんだけが居た。事情を聞こうと思って近づいたら聞き覚えのある声が聞こえてきる。

「言ったよね……僕が寝ている間に物音を立てたら、咬み殺すって……」
「ご、ごめんなさい!すみませんっすみません!すみませんっ!!」
「きょ、恭弥さん……?」

恭弥さんは私の声に気がついたらしく、必死に謝ってる沢田くんを他所にこっちに真っ直ぐ進んでくる。呆然と立ってると、少しむっすりとした顔で目の前まで来ておでこにデコピンをされた。驚いてデコピンされたおでこを手で押さえる。少しヒリヒリとして、目に涙が浮かんできたから恨みがましく恭弥さんをじっと見てしまった。デコピンをしてきた当の本人は、動かずに固まってる。そこで看護士さんが入ってきた。

「沢田さん!何事ですか……!」
「ああ、丁度よかった……それ、どっか連れて行ってよ。あと、もうこの部屋は誰も入れないでね」
「は、はい!わかりましたっ!それでは失礼します!」

看護士さんは恭弥さんに向かって深々と頭を下げると、本当に沢田くんを連れて部屋から出て行った。その場に残された私は、どうしようって軽く悩んでると目の前に影が落ちてきて、それが恭弥さんの腕で抱きしめられてるっていうのに気がつくのに少しの時間がかかった。

「へっ……ちょ、あのっ……な、な、何してるんですか?!」
「静かに……ちょっと補充中?だから気にしなくていいよ」
「き、気にしますよっ!」

完全に密着してて暖かい体温が伝わってくる。心臓が壊れそうなくらい音を立てていて、ばれたらどうしようかとひやひやしたけど、なんとなく恭弥さんの体温が少し高い気がした。

「恭弥さん……もしかして、体温がいつもより高くないですか?」
「ああ、風邪のせいで微熱がでてるからね」
「微熱って……ちゃんと寝てないとダメじゃないですか!」

慌てて恭弥さんを引き離すと、寝ていたベッドまで引っ張ってっ行った。そこまではよかったんだけど、ベッドの前で立ったままなかなか戻ってくれなかった。仕方ないから恭弥さんに「ベッドにちゃんと入ってくれないと帰りますよ?」と笑顔で言ってみると、ベッドに戻ってくれた。朝からあちこちに振り回されてたせいか、それだけでも疲れてきてため息が出てきた。